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2021-02-27

東 直子著「とりつくしま」〜熟成する一冊〜料理仕立てのパン

 
僕たちは大切なひとの側で生きるために何を選択するのか。人は亡くなった時、この世に未練というものを感じるのではないのだろうか想像する。大切な人を見守りたい。もっと一緒に生きて人生を謳歌したかったなどと。
 
もしも「とりつくしま係」から、こんな風に問いかけたらあなたは何と答えますか。
 
「何かモノになって生前の世界に戻ることができます。ただし命のあるものにはなれません」
 
この世に残してきた大切な人を見守ることが出来るとするのなら。
 
 野球少年を持つ母親は息子のロージンバックとなり声援を送る。幼い男の子は生前によく遊んだ大好きだったジャングルジムとなる。恋心をあたためた少女はいつしか大人の女性になり、白檀の香り漂う扇子となって生前の世界に舞い戻る。
 
 亡くなったことへの悲しみ、大切な人へのあたたかな思い。一方的な恋心を抱き続けるかのような想いを伝えられないもどかしさ。目の前の大切な人に語りかけても答えてはくれない。自分の人生に終わりを告げられても、目の前の世界では刻々と時間は流れてゆく。一人ひとりの伝えられなかった想いが大切な人に優しく語りかける作品。
 
 自分の存在が突然この世から消えたとしても、僕は家族を一生見守っていきたいと思う。家族の側で小さな呼吸をするかのように。ひっそりと思い出の中で守り続けたい。
 
 
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