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2021-01-28

「突如視界から消えてしまったA君の話」〜パンくずよりも小さな事をカタルヒト〜

こんな寒い日だったような気がする。遡ること35年ほど前。
長髪で後ろ髪まで長かった高校時代の思い出が蘇る。
 
ある日の体育の授業のであった。僕の通った母校では冬場はサッカーをする授業があった。僕はバスケ部なので、さほどサッカーが上手というわけではないが、それなりに楽しめるレベルではあった。スポーツ好きと元来負けず嫌いの性格で必死で、必死に挑もうとする姿勢だけは忘れない。
 
寒空の中白熱する攻防戦。
僕は右サイドを颯爽と前線に駆け上がり、ドリブルで切り込んでゆく。なかなかのスピードで駆け抜ける。逆サイドに味方のA君が前線に駆け上がる姿を確認した。
 
僕は目の前の相手をフェィントで振り切り、逆サイドのサッカー部のA君にセンタリングを上げようと試みた。
 
「えっ?A君おらんやん!」
 
僕は突如視界から消えたA君を必死で探した。
 
センタリング上げようと相手をフェイントでかわしながら、さらにA君を探す。
 
つい先ほどまで颯爽と風をきるように走っていたA君はどこへ。
 
そして僕はA君を発見することに成功した。なんとA君は運動場の野球の小高く盛られたマウンドの土に足を取られて転倒していたのである。周囲には敵も味方もいないところで、たった一人きりででポツンと転倒していたのである。なんと悲しげなA君の姿であろうか。僕はそのA君にパスをすることを諦め、悲しみを吹き飛ばすかのようなシュート試みたのであった。
 
もちろんゴールなんて出来るわけなどなかった。悲しみはさらに広がった。
 
 
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