toggle
2020-12-29

草野たき著「猫の名前」〜熟成する一冊〜料理仕立てのパン

中学生の佳苗は近所に住む主婦である紗枝子の家に通う。紗枝子から勉強を学び、時には悩み事を打ち明けるなど友人のような関係でもある二人。いつも佳苗のそばにいる紗枝子は、佳苗にとって良き理解者である。親にも相談きないことも紗枝子には相談できる。そこには離れられない「秘密」があると話す紗枝子。佳苗はその「秘密」に心当たりというものが全くない。時には疎ましく感じることもあるのだが、結局はその「秘密」によって関係性が修復されるのである。ある日、担任の先生から不登校である春菜と会うようにと告げられる。会う理由は見つからないままではあったが、入院先の病院にお見舞いに出かけることになる。そこで春菜から告げられたのは「復讐の意思」であった。春菜の「復讐」という言葉に翻弄される佳苗。次第に自分自信をコントロールできなくなり、同級生の絵里との関係もうまくいかなくなる。佳苗はそれぞれの友情の形に心理的ストレスを抱えながら思い悩み追い込まれていく。友情とは何かを「秘密」の解明とともに見出していく物語。心に秘めた伝えられないことは誰しもある。目を伏せたくなる現実に押しつぶされそうになることある。僕たちは自己完結できない時、どうやって抜け出すための光を見つけるのか。もしかすると僕自身、すでに佳苗と同じように混沌とした世界に足を踏み入れているのかもしれない。

関連記事