2020-12-27
寺地はるな著「月のぶどう」〜熟成する一冊〜料理仕立てのパン〜
大阪で営まれるワイナリーは、曽祖父から母へとに引き継がれ、順調に成長を遂げてきた。母の突然の死に悲しみにくれる家族。母の背中をみて、「母のようになりたい」と願っていた光実。一方、双子の弟である歩はというと、姉とは対照的な性格の持ち主で、目の前にあることから逃げるような消極的な人生を送っていた。しかし、光実に引き込まれるように家業を継ぐことを決める。双子の人生を通して、私たちの生き方と照らし合わせてみる。自分とはどうあるべきか。どうなりたいのか。きっと誰もが二人と同じように思い、悩みながら歩んできた経験を持つのではないだろうか。なりたいものになれるのは、ごく一部の人かもしれない。理想とは違う人生を送る人の方が圧倒的に多いのではなかろうか。それでも今を懸命に生きる姿はそれだけで美しいことを教えてくれる。生きている限り、「これで良いのか」という葛藤の時間は継いていく。それでも夜は明け、新しい朝が訪れ、美しい季節は目の前を流れていく。自然と向き合い、必死にぶどうを育て、ワイン作りに没頭する二人は、家族の絆の強さ、人生の喜びをワイン作りから学んでいく。
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