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2017-02-28

~歴史と未来の美味しさを想像・創造する~㈱ツジ・キカイ

~歴史と未来の美味しさを想像・創造する~㈱ツジ・キカイ

2016年12月 大阪市北区堂島 ㈱ツジ・キカイ 堂島ラボ。 赤と黒で統一されたスタイリッシュな空間は華やかなレストランのようである。 ラボの全容の隅々にまで目を凝らし、視界に刻み込んでいく。広々とした空間には、石窯、デッキオーブン等の数種類のオーブンが並ぶ。

正面にはキッチンスペース、その後方にはナポリピッツァ用の石窯が設置されている。誰もが美しいと感じるオーブンに思わず見とれてしまう。2014年1月 堂島ラボ設立。デモ、研修、講習会で、共に学び、研究することを目的として作られた。また、㈱ツジ・キカイは、アンバサドール協会の応援パートナー企業である。堂島ラボは、モンディアル・デュ・パン講習会や壮行会の開催場所としても知られている。私の心は、この場所に足を踏み入れた瞬間、震えるような感動を覚えた。

~モンディアル・デュ・パンとは~

アンバサドール協会主催のフランスで行われる「パンの世界大会」のひとつである。二人一組で22歳以下のアシスタントを共に競い、見た目だけでではなく、栄養や健康の観点も評価対象となる。世界のパン職人の技術の向上、交流を目的としている。日本代表選手として、銀座レカン 割田シェフ、サマーシュ 西川シェフ、ブーランジェリーパリゴ 安倍シェフ、フリアンド 谷口シェフなどの名立たるトップシェフが名前を連ねる。

~オーブンの秘密を探りたい~

2016年11月 パンの事情通として、朝日放送「雨上がりのAさんの話」に出演させて頂いた。ロケではパン屋さんを巡り、オーブンの話題にも触れた。その時のロケがきっかけで、オーブンについて知りたいという探求心が高まったのである。その探求心は、㈱ツジ・キカイに向けられ、今回の取材に至ったのである。

~時代を超えた石窯の再現を目指して~

紀元前4世紀頃 西洋にパンが登場する。小麦粉を練ったものを太陽熱で熱した石の上で焼き上げる。石を積み上げるなどの変遷をくり返して生まれたものが石窯の原型である。ドーム型の石や煉瓦を積み上げた石窯の中で、薪をくべて余熱の蓄積で焼き上げていたそうである。この原理を研究、分析を行い、石窯のさらなる進化への挑戦をしている。そして、㈱ツジ・キカイに原点とは、食の尊さ、人類が受け継いできた伝統の価値を考えることにあるという。

~石から造るこだわりの石窯~

一般的な石は加熱に耐え切れず割れてしまうことがある。そこで、㈱ツジ・キカイは発想の転換を図った。加熱しても膨張しない「石そのものを造る」ことに着眼したのである。そして、生まれたのが「セラミックハウジング」と呼ばれる特別な石窯用の石である。すべての工程を手作業で行うために、制作に40日間の日数を要するという。パン用のセラミックハウジングは厚み30mm~50mmで継ぎ目がない。主な特徴は、蓄熱量の大きさ、遠赤外線量が豊富、調温効果(水分の出し入れ)で、輻射熱のやわらかな熱を生み出すことが可能になる。煉瓦色のセラミックハウジングに、霧吹きで水をかけると、石の表面から水が消えていき、水浮きが見られなかった。これが、焼成時に石が吸収した水分の調整が行われ、庫内のバランスを保てる。

 

~やわらかな輻射熱に触れてみる~

石窯のクラシカ・ポンペイとデッキオーブンを使って、輻射熱の体験させていただいた。200℃焼成後の石窯の内部に手を入れてみると、熱のやわらかさを感じることが出来た。例えるとサウナのような丸みをもった温かい熱という印象である。一方のデッキオーブンの熱は直線的で手の甲にチリチリとした感覚を感じる。この二つの熱に触れてみると違いは一目瞭然であった。

~特別な石窯がもたらすパンの特徴とは~

ツジ・キカイの「特別な石」の特徴を大きくまとめると3点あるという。 ①蓄熱量が大きい ②遠赤外線量が豊富である ③調湿効果 この3点の特徴で焼き上げられたパンはどのようになるのか尋ねてみた。 石窯の特徴は予熱された石から発される圧倒的な輻射熱と遠赤外線の作用だという。パン生地のクラムとクラストにほぼ同時に加熱され、バランスの良い火通りが可能になる。実際に焼き上がったパンの水分と旨味は生地にしっかりと閉じ込められていた。この日に試食したバゲットはクラストがパリッとしており、クラムはしっかりと水分が抱きかかえ、もっちりとした食感であった。石窯がハード系のパンに適していることを再認識した。

~無限にある美味しさへの可能性~

パンヲカタルの活動を通じて出会った素晴らしいシェフの方々。妥協という文字の欠片さえ見せることはない。自分の理想とするパンへの想い、お客様への想い、お店への想い。目指すのはパンで人とつながることだと感じさせてくれる。そんなシェフを支えるパン窯の存在は「物言わぬ協力者」である。シェフの想いと技術が重なり合うとき、美味しさの化学変化を成し遂げるのである。石窯を使用する技術者にはこだわりの強い方が多いとツジ・キカイのスタッフは話す。個性的な石窯だからこそ、熟練の技術を要することもあるが、美味しさの可能性は無限に感じているという。ツジ・キカイの美味しさを探求する旅は始まったばかりである。

(パンヲカタル 浅香正和)

株式会社 ツジ・キカイ

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TEL:049-225-0833 Fax 049-225-5008

大阪支店+堂島ラボ
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