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2016-05-07

三浦しをん著「仏果を得ず」 熟成する一冊~料理仕立てのパン~

三浦しをん著「仏果を得ず」

「人形浄瑠璃・文楽」に身を投じ、稽古を積み重ねる中で、芸に迷い、恋に悩み、葛藤する健。
その世界は、人間らしくもあり、非日常的な時間を描いているように思えた。

健が義太夫という未知の世界に足を踏み入れるきっかけは、高校の修学旅行であった。
舞台上から、健に向かって放たれた銀太夫の圧倒的な語りのパワーの虜になった。
その後、健は義太夫になり、「文楽の世界に存在する人物」を描くにはどうすればよいのかに思い悩む。
人物像を掘り下げ、自分自身を投影していくのか。
それとも俯瞰して語るのか。終わることない芸の道への探求心。

岡田真智との悩ましい恋に揺れながら、人としての成長する姿が人間臭く描かれている。
芸と恋に身を任せるということに共通するのは「人を知り、心を知ること」ではないかと感じる。
義太夫の健と三味線の兎一郎の二人が奏でる一体感と緊張感のあるストーリーも、個性的過ぎる登場人物の前に、幾度となく心の糸が緩んでしまう瞬間が訪れる。

2015.12.27読了

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